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安井研究室
研究内容
 

プラズマ技術

水中沿面放電プラズマによる培養液の殺菌や植物の生育促進

 大気圧非平衡プラズマを液体に照射、もしくは液体中で非平衡プラズマを発生させることで液体中にラジカルなどの活性種を導入することができます。この技術は医療用の生体化学反応としての応用研究が世界中で活発に行われています。
 私たちの研究室では,この技術を培養液の殺菌や植物の生育促進などの農業分野への適用を研究しています。 従来の養液栽培では,植物の栽培に大量の培養液が用いられ、廃棄されてきましたが、近年環境保全や資源の有効利用の点から,少量の培養液を循環させる薄膜水耕栽培の導入が進められています。しかし、水耕栽培では土壌とは違い微生物による緩衝作用がなく、通常の露地栽培では影響が少ない病原菌も,栽培に壊滅的被害を与えてしまいます。私たちの研究では,培養液へのプラズマ照射によって,ホウレンソウの薄膜水耕栽培において最も被害を与える根腐病であるフザリウム菌を完全に死滅させることに成功しました。
 現在,溶液中へのプラズマ照射,もしくはプラズマ処理した機能水について,野菜苗の生育促進と病害抵抗性の向上に適用する研究を進めています。 なお,これらの研究は文部科学省の科学研究費補助金の事業(Number 25450043)として進めています。

Fig.1 植物工場と水中沿面放電プラズマ発生装置


大気圧プラズマによる温室効果ガス分解技術

 地球温暖化の原因となるため,京都議定書で排出削減が定められた温室効果ガスは,二酸化炭素(CO2),メタン(CH4),一酸化二窒素(N2O),ハイドロフルオロカーボン(HFC),パーフルオロカーボン(PFC),六フッ化硫黄(SF6)の6種類があります。私たちの研究室では,この内,特に温暖化係数の高いHFCやSF6,さらには半導体産業で多く使用されているPFCの中の三フッ化窒素(NF3)ガスについて,分解技術を確立すると同時に,それぞれのガスに含まれるフッ素(F)をカルシウム材料を用いて高純度のフッ化カルシウム(CaF2)として回収する技術を開発しました。(下記の研究参照)
 一方で,半導体産業においてエッチングやクリーニングなどの重要な工程で使用されるCF4ガスは,PFCの中でも非常に安定で分解しにくいガスとして知られています。また,N2Oガスは,半導体産業以外に医療用の麻酔ガスなどとして多く使用されていますが,通常の熱分解によるガス処理技術ではNOxなどの副生成物が多量に発生してしいます。私たちの研究室では,難分解性のCF4やN2Oガスについて,非熱平衡プラズマを用いることによって,副生成物を生成することなく,効率良く分解する技術の開発を進めています。
Fig.2 分解実験装置と放電の様子


大気圧非平衡プラズマによる表面処理およびDLC膜の生成

 大気圧非平衡のプラズマは,親水性の改善や,フィルム接合の密着性の向上などの表面処理手法として,幅広い分野で利用されています。私たちの研究室でも,親水性メカニズムの解明や繊維材料への親水性の付与と抗インフルエンザ布帛の開発研究など,様々な研究に取り組んできました。現在は,大気圧プラズマの成膜分野への応用に向けて研究を行っています。プラズマCVDによる成膜は,通常,真空チャンバー内で行われていますが,大気圧下で成膜できれば,連続した成膜工程や成膜コストの低減につながります。
 これまで,ポリカーネートの樹脂材料の表面に二酸化珪素(SiO2)の膜を形成することに成功しています。さらに,ダイアモンドライクカーボン(DLC)膜の形成に取り組んでいます。DLC薄膜は,硬度,低摩擦係数,ガスバリア性,電気電導性など優れた物性を有しているので,工具用,飲料容器,装飾,電子デバイスなどの被覆として幅広い応用があります。私たちの研究室では,メタン(CH4),水素(H2),ヘリウム(He)を原料ガスとして,大気圧下での非平衡プラズマCVDによって,DLCの成膜に成功しています。
  
Fig.3 布帛の親水化処理


フッ素リサイクル

温室効果ガスの分解とフッ素リサイクル

 私たちの研究室では,冷媒用途で多量に使用されているフロン類,電気絶縁性のガスとして電力産業で多量に使用されているSF6ガス,半導体産業のクリーニング工程で使用されているNF3ガスについて,それぞれの分解技術を確立するとともに,それらのガスに含まれるフッ素を高重度フッ化カルシウムとして回収する技術を確立しました。
 フッ素の原料となる蛍石(フッ化カルシウム)は,中国やメキシコからの全量輸入に頼っており,我が国にとって貴重な資源であります。我々の研究室で開発した技術により,これらの温室効果ガスからフッ素を回収し,輸入品と同等の純度の蛍石を容易に生成ことができます。これらの技術開発は,文部科学省の科学研究費補助金の事業として進めてきました。(Number 19560820, 22560813)
 さらに,岩谷産業株式会社と上田石灰製造株式会社との共同研究によって,高級カメラレンズや天体望遠鏡、半導体露光装置(ステッパー)に使用されている光学用の蛍石レンズの原料となるフッ化カルシウムの生成に成功しました。開発に成功した合成蛍石は99.95%以上と極めて高純度であり,光学レンズメーカーの評価では,天然蛍石を使用した場合と比較して,光学特性が良好になるという評価を得ています。
            
Fig.4 炭酸カルシウムから転換した蛍石(純度97%以上)

            
Fig.5 人口合成蛍石(純度99.95%)

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雷サージ対策

 近年,地球温暖化に伴い特に太平洋側の地域においても亜熱帯性の気候が顕著となり,それに伴い大型の雷放電が増加しており,高度情報化時代に対応する高額機器やインフラに対し大きな被害をもたらしています。私たちの研究室では,過渡電磁界解析や過渡回路解析の技術を駆使して,高度情報化ビルや機器を直撃雷や雷サージ過電圧から保護する技術を研究しています。
 オフィスビル,データセンター,変電所,電力システムなどを対象として,最適な雷保護対策に向けて,受雷システム,引き下げ導線,接地システムなどの総合的な研究や,サージ保護デバイス(SPD)の最適配置などの雷過電圧対策を研究しています。
 また,落雷に伴う大地電流の挙動などの物理的な解明も進めています。
Fig.6 雷サージ